明日の蒼の空
 まだ三週間くらい先のことだけど、私はさっそく旅行の準備に取り掛かることにした。

 みんなのふっちゃんに電話を掛けて、菓絵さんの祖母さんに、家族で旅行に行くことを話したところ、「お絵描き教室は休んでいいから、楽しんでおいで」と言ってくれた。

 リビングのカレンダーに旅行の日程を書き込んで、フローリングの上に、この世界の世界地図を広げてみた。

 いろんな名前の町がある。いったいどこに連れて行ってくれるのだろう。東ひまわり町から、一歩も出たことのない私にとって、未知の世界。

 世界地図を畳んで、夏美さんの部屋を覗いたところ、クローゼットを開けていて、「どの水着を持っていこうかな」と独り言を言っていた。

 その様子を見ていて、もしかしたら、海に行くのではないかと私は思った。

 残念なことに、私は泳ぎが苦手。

 クロールは息継ぎができないし、平泳ぎはぜんせん前に進まない。背泳ぎをしようとすると、鼻に水が入ってしまい、苦しくなって溺れてしまう。バタフライなんて、とてもじゃないけどできない。唯一、泳げるのは犬掻き。もし、海に行くのなら、泳げるようになりたい。

「りさは泳げる?」

「ぜんぜん泳げない」

「それじゃあさ、私と一緒にプールに行って、泳げるように練習しようか」

「うん。泳げるように練習する」

 泳ぎの練習をする前に、水着を用意しなければならない。

 奈菜子さんが部屋に残していった水着は、どれも派手なものばかり。私は恥ずかしくて着られない。

 今日はもう遅いので、また明日にでも、みんなのお店に行くことにした。
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