明日の蒼の空
「夏美さん、朝食をドアの前に置いておきますね。今日も暑くなりそうなので、しっかりと水分補給してくださいね」

 夏美さんの部屋のドアの前に、フレンチトーストとホットコーヒーと冷たいお水の入った魔法瓶を置いた。

 今日の出勤は無理だと判断し、夏美さんの勤め先に電話を掛けて、事情を説明した。

 できることなら、私も仕事を休みたい。でも、そういうわけにはいかない。

 夏美さんの分とりさの分のおむすびと鳥のから揚げを作って、ダイニングのテーブルに置いた。埃が入らないように、ラップを掛けた。

「私は仕事に行ってくるから、りさは夏美お母さんのお世話をお願いね」

「うん。わかった」

 夏美さんのお世話はりさに任せて、私はいつもの時間に家を出た。

 今日も真っ白い大きな雲が浮かんでいる。

 夏の日差しが照りつけている。

 さわやかな風が吹いている。

 いろんな種類のセミの鳴き声があちこちから聞こえてくる。

 長い網を持った子供たちがポプラに樹の周りに集まっている。

 川で釣りをしている人がいる。

 ひまわりもラベンダーもタンポポも元気に咲いている。

 大きな旅行バッグを持って、馬車に乗り込んだ家族連れ。

 ずっと楽しみにしていた家族旅行。夏美さんが行かなければ意味がない。
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