明日の蒼の空
りさがテントで眠った後、夏美さんはベンチに座って、ビールを飲み始めた。
私もベンチに座り、ビールを飲んだ。
「蒼衣は、好きな人はいるの?」
いきなりの質問に、私は動揺してしまった。
好きな人はいないので、「いません」と言って答えた。
「恋は楽しいわよ。蒼衣も誰かと付き合えばいいのに」
あのことがあるので、私は返事に困ってしまった。
明るすぎる星空を見つめながら、どう答えようか考えていると、虹色の流星群が降り注いできた。
「星の数ほど恋の数がある。星の数ほど別れの数もある。切ない別れが少しでも減りますように」
夏美さんが静かな声でつぶやいた。
ふうー。と大きく息を吐いて、ビールを一気に飲み干した。
「あたしはさ」と言って、私の方に振り向き、地上の世界で暮らしていた当時のことと、この世界に来た当初のことを話してくれた。
夏美さんは、二十七歳の夏、若年性乳がんになってしまい、三年間にも及ぶ闘病の末、お亡くなりになられたとのこと。
彼氏さんは、忙しい仕事の合間を縫って、ほとんど毎日のようにお見舞いに来てくれて、明るく励まし続けてくれたという。
生きたくても生きられなかった悔しさ。病気を治せなかったことに対しての自責の念。彼氏さんへの申し訳ない気持ち。
自身が亡くなったという現実を受け入れられず、ふらっと一人旅に出て、御手洗さんと出会い、星のしずく海岸にたどり着いたとのことだった。
夏美さんの誕生日は、八月二十三日。
夏に生まれ、夏美と名付けられ、夏のように明るい大人に成長し、夏に重い病気に掛かり、夏美として生き抜き、夏に亡くなり、夏に彼氏さんから別れを告げられた。
思い出の多すぎる夏。
人前では、明るく振る舞っている夏美さんだけど、心の中ではずっと涙を流していたのかもしれない。
私もベンチに座り、ビールを飲んだ。
「蒼衣は、好きな人はいるの?」
いきなりの質問に、私は動揺してしまった。
好きな人はいないので、「いません」と言って答えた。
「恋は楽しいわよ。蒼衣も誰かと付き合えばいいのに」
あのことがあるので、私は返事に困ってしまった。
明るすぎる星空を見つめながら、どう答えようか考えていると、虹色の流星群が降り注いできた。
「星の数ほど恋の数がある。星の数ほど別れの数もある。切ない別れが少しでも減りますように」
夏美さんが静かな声でつぶやいた。
ふうー。と大きく息を吐いて、ビールを一気に飲み干した。
「あたしはさ」と言って、私の方に振り向き、地上の世界で暮らしていた当時のことと、この世界に来た当初のことを話してくれた。
夏美さんは、二十七歳の夏、若年性乳がんになってしまい、三年間にも及ぶ闘病の末、お亡くなりになられたとのこと。
彼氏さんは、忙しい仕事の合間を縫って、ほとんど毎日のようにお見舞いに来てくれて、明るく励まし続けてくれたという。
生きたくても生きられなかった悔しさ。病気を治せなかったことに対しての自責の念。彼氏さんへの申し訳ない気持ち。
自身が亡くなったという現実を受け入れられず、ふらっと一人旅に出て、御手洗さんと出会い、星のしずく海岸にたどり着いたとのことだった。
夏美さんの誕生日は、八月二十三日。
夏に生まれ、夏美と名付けられ、夏のように明るい大人に成長し、夏に重い病気に掛かり、夏美として生き抜き、夏に亡くなり、夏に彼氏さんから別れを告げられた。
思い出の多すぎる夏。
人前では、明るく振る舞っている夏美さんだけど、心の中ではずっと涙を流していたのかもしれない。