明日の蒼の空
 その男性客の姿が、この世界に来た当初の自分と重なって見える。

 新しい環境にまだ慣れていないのだと思う。

 ショックから立ち直れていないのだと思う。

 立ち直りの早い人もいれば、立ち直りの遅い人もいる。

 私は、その男性客のことが気になってしまい、萌に名前を聞いてもらった。

 青葉正行さんという名前だった。



 青葉さんは、今日も一人で来店し、入り口近くの窓側の二人席に座った。

 ドリンクは注文しないで、暗い表情で黙々とランチを食べている。

 ひばりさんも、青葉さんのことを気に掛けているようで、ひまわりジュースの入ったグラスを持って厨房から出ていった。

「当店の名物の一つ、ひまわりジュースです。よかったら、飲んでみてください」

「あ、どうもありがとうございます」
 青葉さんは恥ずかしそうにお辞儀をした。

 にこっと微笑んで、ひまわりジュースを飲み始めた。

「うわ、ちょっと苦いな。でも、美味しいな」とつぶやいて、ひまわりジュースを一気に飲み干した。

 私は少し安心した。

 さすがひばりさんだと思った。
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