明日の蒼の空
「お忙しいところ、どうもすみません」
 私に向かって頭を下げた青葉さんは緊張しているように見える。

 もちろん、私も緊張している。

「いいんですよ。大した用事はありませんので」

「そうですか。申し遅れましたが、僕の名前は、青葉正行と申します。あなたは、みんなのひまわり憩い食堂の店員さんですよね?」

「はい。そうです。私は、八木蒼衣と申します」

「八木さんですね。どうぞよろしくお願い致します」

「私こそ、どうぞよろしくお願い致します」

 青葉さんと私は頭を下げ合った。

「正行さんとお呼びしてもいいですか?」

「はい、どうぞ呼んでください」

 まだほんの少ししか話していないけど、仕草や話し方からして、正行さんは気が弱そうに見える。

「あの、八木さんに、お願いしたいことがあるんですが」

「はい。どんなことでしょうか」

「あの、頼みにくいことなんですが」

「私でできることでしたら、何でもおっしゃってください」

「は、はい。あの、僕の妻の様子を見てきてもらえませんか」

「え、私が見に行くんですか?」

「はい。八木さんにお願いしたいんです」

「別にいいですけど、どうして私に頼もうと思ったんですか?」

「それはですね……」正行さんは少し間を置いた。「八木さんは、あの女の子の母親ですよね?」

「はい。そうです」

 今は自分の話をするときではなく、正行さんのお話を聞くとき。

 私がりさの実の母親でないことは、黙っておくことにした。
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