明日の蒼の空
「あの、僕にも娘がいまして」

「そうなんですか。娘さんと一緒に暮らしているんですか？」

「いえ、娘は、地上の世界にいます」
　悲しげな表情で答えてくれた正行さんは下を向いた。

　目に涙を滲ませ、大きく溜め息をついた。

「どうもすみません」と涙声で言って、顔を上げた。

　Ｔシャツで顔を拭いて、今に至るまでの経緯を話してくれた。



　正行さんは、家族で川にバーベキューに行ったとき、川で溺れた息子さんを助けようとして、服を着たまま、川に飛び込み、息子さんを救出した後、溺れてお亡くなりになられたとのこと。

　享年、二十九歳。

　東ひまわり町に来て、まだ日が浅いという。

　町外れにある古い一軒家に一人で暮らしていて、知り合いも友達もいないという。

　地上の世界には、正行さんの一つ年下の奥様と四歳の女の子と三歳の男の子がいるとのこと。

　私に頼んだ理由は、私が正行さんと同じ年頃の娘を持つ親だから。みんなのひまわり憩い食堂の店員だから。人が良さそうに見えたから。ということだった。
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