明日の蒼の空
「町長さんの吉川さんが、地上の世界への降り方を教えてくれまして、何度か自分で見に行ったことはあるんですが……」
 正行さんの声はだんだん小さくなっていった。

 目に涙を滲ませたまま、膝に乗せた手を震わせている。

 きっと、辛すぎる場面を見たのだと思う。

 そのことがトラウマになっているのだと思う。

 私も経験したことなので、正行さんの気持ちは理解できる。

 自分で見に行くのは辛くて怖い。誰かに見てきてほしい。

「それ以上、何も言わなくていいですよ。正行さんのご心配なお気持ちはよくわかりますので」

「そうですか。引き受けてくださるんですね」

「はい、もちろんです」

「辛い役目を引き受けてくださって、どうもありがとうございます」
 嬉しそうな声でお礼を言ってくれた正行さんは、ベンチから立ち上がり、私に向かって深々と頭を下げた。

「八木さんに頼んでみてよかったです」と笑顔で言ってくれて、ベンチに座り直した。
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