明日の蒼の空
「それでは、地上の世界に降りてみます。奥様の様子を見たら、戻ってきますので、ここで待っていてくださいね」
 正行さんに声を掛けて、私はベンチから立ち上がった。

 正行さんの奥様の春子さんに逢いに行かせてください。お願いします。と心の中でつぶやいた。



 正行さんが言っていたとおり、正行さんの奥様の春子さんらしき女性は、自宅のアパートにいた。

 リビングの床の上に正座して、ぼーっとしている。

 放心状態なのだろうか。目は虚ろで、口を開けている。身動きは全くしない。

 日菜子ちゃんと寛太くんは、子供部屋でテレビゲームをして遊んでいる。

 私が思っていたとおりだった。

 一家の大黒柱である、旦那様を失ったのだから、元気なわけがない。

 正行さんを安心させるため、私はウソをつこうかと思った。

 見たままを伝えず、春子さんはお元気な様子でしたよ。と伝えることもできる。でも、やっぱりそれはいけないことだと思った。見たままを伝えると、正行さんと約束したし、ウソをついても、すぐにバレてしまうから。
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