明日の蒼の空
「あたしは、てんしなんです」
 私が質問する前に、くーちゃんが答えてくれた。

「え、あなたは、てんしさんなんですか?」
 私はとても驚いてしまった。

「はい。てんしです」

「てんしさんといいますと、背中に羽根のある天使さんのことですか?」

「そうですよ。あたしの背中に羽根は生えていませんけどね。それでですね」
 自らを天使さんだと名乗るくーちゃんが、天使さんのことについて話してくれた。

 くーちゃんは、五歳の秋に病気でお亡くなりになられて、この町の天使さんに生まれ変わったという。

 天使さんは、お亡くなりになられた人の中から選ばれて、世界中の町に一人ずついるとのこと。

 天使さんは、大昔から存在していて、人から人へとバトンを繋ぎ、四年ごとに交代を繰り返しているとのこと。

 くーちゃんは、ねぎちゃんというおじさんの後を引き継いで、天使さんになって、二年目になるという。

 くーちゃんがパジャマ姿なのは、病室でお亡くなりになられたときに、パジャマを着ていたから。ということだった。

 着替えはできないとのことで、一年中、パジャマ姿で過ごしているという。

 寒さも暑さも感じず、飲食も睡眠もできず、二十四時間、起きているとのこと。

 天使さんは、チャイムを押したり、ドアを開けたりすることができないとのことで、とても不便な生活をしているとのこと。

 くーちゃんは、天使さんの姿が見えるというおばあさんの家で暮らしているらしい。

 くーちゃんの姿が見える人は、私で三人目とのこと。

 なぜ、私がくーちゃんの姿が見えるのか、それは言うまでもない。
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