明日の蒼の空
 日曜日の午前中、正行さんと私との二人で町外れの小高い丘に登った。

 正行さんの力量を確かめるため、淡い水色の空のキャンバスに、一輪のひまわりの絵を描いてもらった。

「下手ですみません。僕は絵心がないんです」
 正行さんが自分で言ったとおり、正行さんは絵心が全くない。

 何をどうすればそんなに下手に描けるのか。と首を傾げてしまうくらい、枯れて萎れたひまわりの絵。

 色の使い方も滅茶苦茶。お世辞にも、ひまわりの絵とは言えない。

「下手でもいいんですよ」

 絵が下手なのは問題ない。

 問題なのは、絵を描く速さ。

 正行さんは、絵を描くのが非常に遅い。

 縦幅が五メートル、横幅が三メートルサイズの一輪のひまわりの絵を描くのに、一時間以上も掛かってしまっている。

 それではいくらなんでも遅すぎる。

 本番ではもっと大きな絵を描かなければならない。

 何の絵を描くにしても、最低でも十分以内。

 一秒でも速いほうがいい。

 ひばりさんや私が描いても意味はない。

 正行さんが描くということに大きな意味がある。

 早く描けるようになるには、とにかく練習するしかない。
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