明日の蒼の空
 みんなのひまわり憩い食堂の開店時間は、午前十一時。十二時を過ぎると、あっという間に満席になってしまうので、私はいつも早めに家を出る。

 十一時過ぎに、色鉛筆の入った手提げバッグとスケッチブックを持って家を出て、小さな小川の上に架かっている木造の橋を渡り、広大なひまわり畑の中を一人で歩く。

 交通手段は自転車か馬車か電車。五百メートルおきくらいに馬車の停留所があり、バスのような二両編成の電車の駅は町の中心部にある。私は自転車にも馬車にも乗らず、いつも歩いて行っている。

 排気ガスを撒き散らす車やオートバイは走っていないし、もくもくと煙を出す煙突もないし、飛行機が飛んでいないので、空気が美味しく感じられる。

 そのおかげなのか、幼い頃からずっと患っていた喘息が治ったし、目に優しい風景が広がっているので、目がよく見えるようになった。

 今年の春に受けた健康診断で視力検査をした時の視力は、度の厚いメガネを掛けて、右目が0・7。左目が0・8。

 視力検査をしてみないとわからないけど、今はメガネを掛けなくても、両目とも1・5くらいはあると思う。

 メガネを掛けていないと、なんだか落ち着かないので、私は夏美さんにもらった、べっ甲色の伊達メガネを掛けている。
< 3 / 315 >

この作品をシェア

pagetop