明日の蒼の空
 私とひばりさんと夏美さんとりさと御手洗さんとくーちゃんは、大急ぎで春子さんの後ろに回り、五メートルほど距離を取って、横一列に並んだ。

 正行さんは水色の色鉛筆を握り締めて、春子さんの真後ろに立った。

 空さん、今から正行さんが空のキャンバスに絵と文字を描きます。春子さんと日菜子ちゃんと寛太くんに見せてあげてください。どうか、どうか、よろしくお願い致します。

 私、ひばりさん、夏美さん、りさ、御手洗さん、くーちゃんとの六人で空に向かってお願いした。何度も何度もお願いした。真心を込めてお願いした。力の限りお願いした。

 空さん! 今から僕が描く絵と文字を! 春子と日菜子と寛太に見せてあげてください! よろしくお願い致します!

 正行さんも空に向かってお願いした。ものすごく大きな声だった。



 正行さん! 渾身の愛を込めて描いてください! 私は後ろから声を掛けた。

 渾身の愛を込めて描きます! 正行さんは前を向いたまま、声を張り上げて叫んだ。

 正行さん! 頑張れ! みんなで声援を送った。

 頑張ります! 正行さんは、水色の色鉛筆を空中に走らせた。

 その瞬間、空は一気に晴れた。

 春子さんの真正面の淡い水色の空のキャンバスに、渾身の愛を込めて絵と文字を描く。



 ピッチャーは、春子さん。

 バッターは、正行さん。

 日菜子ちゃんは、セカンドの守備。

 寛太くんは、ショートの守備。

 四人とも、ユニフォーム姿。

 アンパイアの目線で描かれた構図。
 
 空中で案山子が野球をしているような感じの絵。

 躍動感は全くない。



 絵の次は文字。

 家族四人で野球をしている絵の上に、日菜子ちゃん、寛太くん、春子さんの順に、家族に向けた文字を横書きで描く。

 ひと目で読めるように大きく大胆に。

 文字色は明るいオレンジ色。



 ものすごく下手だけど、正行さんは一生懸命に描いた。

 渾身の愛を込めて描いた素敵な作品。

 あとは奇跡が起きるのを待つだけ。
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