明日の蒼の空
「今、見えたよね?」
 春子さんが日菜子ちゃんに尋ねた。

「見えたよ!」
 日菜子ちゃんは大きな声で答えた。

「ママ、読んだよね?」
 春子さんが寛太くんに尋ねた。

「うん! 読んでくれたよ!」
 寛太くんも大きな声で答えた。

「そっか」
 春子さんは地面に転がっている青色のカラーボールを拾った。

「さあ! 野球をしましょう!」
 とても明るい声で言った春子さんは、ピッチャー。

 嬉しそうにプラスチックバットを持った寛太くんは、バッター。

 にこにこ顔の日菜子ちゃんは、キャッチャー。

 涙で顔をくしゃくしゃにしている正行さんは、守備についた。



「寛太、投げるわよ」

「うん」

「それー」

 春子さんが投げたボールは、寛太くんと日菜子ちゃんの頭上を大きく越えていった。

「ママ、そんなにおもいっきり投げないでよ」
 バッターの寛太くんが、ピッチャーの春子さんに向かって言った。

 キャッチャーの日菜子ちゃんは、ボールを追いかけていった。

 守備の正行さんは、ものすごく嬉しそうな顔をしている。



「ごめん、ごめん」
 春子さんは両手を高く上げながら飛び跳ねている。

 ものすごく明るい笑顔。

 こんなに元気な春子さんを見たのは私は初めて。

 ひばりさんと夏美さんは涙ぐんでいて、りさと御手洗さんとくーちゃんはにこにこと微笑んでいる。

 私は泣きながら微笑んだ。
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