明日の蒼の空
「会場にお集まりの皆様、おはようございます。私は司会進行役を務めさせていただく、藤崎夏美と申します。どうぞよろしくお願い致します」

 夏美さんが頭を下げた瞬間、大勢の観客から拍手が沸き起こりました。

「恥ずかしながら、私は絵が下手です。絵心は全くありません。人の顔を描くと、どうしても、へのへのもへじになってしまいます。いくら描いても上手になりません。なので、私は出場しません。絵が上手な人が羨ましいです。絵心のある人が羨ましいです。絵は素晴らしいアートだと思います。絵には不思議な力があると思います。絵は多くの人の心を和ませ、元気や夢や希望や勇気を与えてくれます。人はいつから絵を描くようになったのでしょうか。人はこれからどんな絵を描いていくのでしょうか。未来のことは誰にもわかりません。誰にもわからないから、未来なのだと思います。私は明日、仕事帰りに本屋さんに寄る予定です。いただく本は決めてあります。ですが、もしかしたら、違う本をいただくかもしれません。急に気が変わるかもしれません。明日のことは明日になってみないとわからないのです。未来は自分の手で変えるものだと思います。未来はいくらでも変えることができると思います。私事になりますが、私はビールが大好きです」

「夏美さん、夏美さん、挨拶が長いですよ」
 私は小さな声で夏美さんに声を掛けました。

「あ、うん。どうも長々と失礼致しました。第一回、東ひまわり町、空のキャンバスコンテストをお楽しみください。それでは! スタート!」

 夏美さんの合図により、子供の部が始まりました。

 どの子も楽しそうに描いています。

 淡い水色の空のキャンバスに、どんな絵を描いてくれるのでしょうか。

 楽しみで仕方がありません。

 私の心は躍っています。
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