明日の蒼の空
「絵を描かせてください」
 声に出して言って、空に向かってお願いしてみた。

 私の願いは届いたのだろうか。空は私にも絵を描かせてくれるのだろうか。とにかく緊張する。

「それでは、描きます」

「うん」

 ひばりさんが見守ってくれている中、私は空中に水色の色鉛筆を走らせた。

 まずは筒状花の部分から。塗りたい色をイメージしながら空中に円形を描く。

「あ、茶色が塗れました」

 頭の中で茶色をイメージしながら描いたら、空中に茶色が塗れた。赤茶色をイメージしながら描いたら、赤茶色も塗れた。

 水色の色鉛筆を握って描いているのに、違う色が塗れるなんて本当に不思議。そもそも、空中に色が塗れること自体が本当に不思議。

「その調子で、どんどん描き進めていって」

「はい」
 私は無我夢中で、オレンジ色の一輪のひまわりの絵を描き進めた。

 茶色と赤茶色で描いた筒状花の次はオレンジ色の花びら。とにかく焦らず落ち着いて、一枚一枚、丁寧に描いていく。

 オレンジ色の花びらの次は緑色の茎。真ん中の太い茎は真っ直ぐに描いて、太い茎から枝分かれしている細い茎は斜めに描く。茎から生えている葉っぱは大きく大胆に。

 水色の色鉛筆を握り締めた手を動かしているだけなのに、頭の中でイメージした絵が次々と形になっていく。

 スケッチブックに描いているかのように、描きたいように描ける。好きなように描ける。自由自在に描ける。いろんな色が塗れる。

 楽しいなんてものじゃない。
< 64 / 315 >

この作品をシェア

pagetop