明日の蒼の空
「絵を描かせてください」
 優しい声で空に向かってお願いしたひばりさんは、筆を握り締めた手を素早く動かし始めた。

 とにかくものすごい速さ。まるで筆が踊っているかのよう。

「完成よ」

 明日のランチは、お刺身定食。

 色鮮やかなお刺身の盛り合わせ(しその葉と大根のつまとわさびまで描かれている)。

 イカと大根と里芋の煮物。具沢山の海鮮茶碗蒸し。小鉢に入ったお新香。

 オレンジ色のお茶碗にてんこ盛りの真っ白いご飯(お米のつぶつぶ感が巧みに表現されている)。

 ハサミの大きな真っ赤な蟹のお味噌汁。

 どの絵も斜め上から見た感じで描かれている。

 描き始めから完成まで僅か十分間くらい。

 相変わらずの早業に、私はただただ驚愕するばかり。
< 72 / 315 >

この作品をシェア

pagetop