明日の蒼の空
「私が描いた絵の隣に、同じ絵を描いてもらえないかしら」

「わかりました。描いてみます」

 ひばりさんにスケッチブックを持ってもらい、水色の色鉛筆を握り締めて、みんなのひまわり憩い食堂方面の空を見上げた。

 私にも描ける。集中すれば、どんな絵だって描ける。地上から、七十七メートルの高さに描く。みんなのひまわり憩い食堂の真上に描く。ひばりさんと同じ絵を描く。そう自分に何度も言い聞かせて、集中力を高めた。

「絵を描かせてください」
 空に向かってお願いして、水色の色鉛筆を空中に走らせた。

 なぜなのかわからないけど、すらすら描ける。空は、私のことを気に入ってくれたのだろうか。

「描けました」
 ひばりさんの三倍以上の時間が掛かったけど、私も地上から七十七メートルの高さにお刺身定食の絵が描けた。

 これぞ正真正銘の空のキャンバス。まるで空のキャンバスアーティストになった気分。

 この世界に来られて本当に良かったと思った。東ひまわり町で暮らせて本当に良かったと思った。ひばりさんと出会えて本当に良かったと思った。感無量どころじゃない。嬉しすぎて気絶しそう。
< 73 / 315 >

この作品をシェア

pagetop