明日の蒼の空
 午前中に描いたお刺身定食の絵とランチメニューの文字を、北面、東面、南面、西面の順で消した後、町外れにある小高い丘に登ってみた。

 遠くの町まで見渡せる大パノラマが広がっている。

 みんなのひまわり憩い食堂の建物もみんなのふっちゃんの建物も東ひまわり公園も夏美さんと私の家も線路を走っている電車も見える。

 遠くの空に風船のような可愛らしい雲が浮かんでいて、白鳥のような真っ白い鳥が群れをなして羽ばたいている。

 丘の上にぽつんと佇んでいる私はちっぽけな存在。

 空って本当に広いと思う。本当に美しいと思う。本当に素敵な存在だと思う。そんな空に絵が描けるようになったなんて、本当に幸せなことだと思う。

「空さん、いつもありがとうございます。また絵を描かせてもらいますね」

 私に絵を描かせてくれている空に感謝の気持ちを捧げながら、どこまでも広がっている大きな空のキャンバスに、私の好きなクジラさんの絵を描いてみた。

 高さは地上から百メートル。大きさは縦幅が二十メートル、横幅が八十メートル。まるで空を飛んでいるかのようなクジラさんの絵。我ながら上手に描けたと思う。

 空はみんなのもの。

 せっかく描いた絵だけど、ひばりさんがプレゼントしてくれたカメラで写真に収めた後、息を吹きかけて消した。

 この世界の空と地上の世界の空は繋がっているのだろうか。オレンジ色に染まり始めてきた空を見つめながら考えてみた。

 もし、繋がっていたとしたら、地上の世界の空にも絵が描けるかもしれないと思った。描けるなら、いつか描いてみたいと思った。
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