薬指、空けとけよ
薬指、空けとけよ
「由里香」

「ん？」

「好きだよ」

「っ、なに、いきなり…」


最近、彼氏の様子がおかしい。
私達は高校生にしたらさっぱりした付き合いをしてると思う。
べたべたするのはお互い好きじゃない。

だから、出歩く時に手を繋ぐとかもあんまりない。
それが、私達にはちょうどいい距離感だった。

なのに何故か最近の彼はちょっと甘い。

愛の囁きを、普通に紡いだりする。
居心地が悪いとは思ったけれどやっぱり私はあいつの彼女で。
なんだかんだ満更でもなかったし、彼の変化には見て見ぬフリをしていた。


それが、この結果を招いたのかもしれない。


「別れて」

「っは、？」

「だから……、別れよう」


目の前の彼はとてもじゃないけど冗談を言ってるような雰囲気ではなくて。
ただただ真っ直ぐ、その焦げ茶色の瞳を私に向けている。

この人は、こんなことで、私をからかったりしない。
それが全てを物語っていた。

彼が今ふざけてるだとか、そんなことではなく。

本気で。


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