熱愛系エリートに捕まりました
昼休みの時間帯なので、ホールはランチから戻ってきた各社の社員で混雑していた。

わたしたちもエレベーターを待ちながら、果穂さんの過去の合コンエピソードを聞いていたのだけど。


「瞳子!」


そんなに大きな声ではなかった。

でも、もうすっかり聞き慣れてしまったその呼びかけを、わたしの耳は聞き逃さなくて。

びっくりして振り向いたら、薬師丸さんと、その後ろについて若い女性がゲートを抜けてくるところだった。


「ここで会うのは初めてだね。お昼食べてきたの?」

「え、あ、はい…」


今日もピシッと決まった三つ揃いのスーツ姿で、にこやかにこちらに近づく薬師丸さん。

隣で果穂さんがぽかーんと彼を見つめているのが視界の端に見えた。


「今日は何食べたの?またあのイタリアン?」
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