熱愛系エリートに捕まりました
薬師丸さんは一瞬だけチラッと背後の彼女を見やってから、わたしに笑顔を向けて頭を撫でていく。


二人の背中を見送ると同時に、わたしたちのエレベーターも到着して乗り込んだ。

いろいろ聞きたそうにウズウズしている果穂さんを後目に、わたしはこっそり唇を噛む。


蒼士さん、と彼を呼んだあの子。

あんな可愛い子に懐かれてても、薬師丸さんはなんとなく鬱陶しそうだった。


きっとあの子は本当に彼が好きで。

でも、彼にとってそれは煩わしいもので。


わたしが遊び相手でいられるのは、彼女みたいに本気のアプローチをしてないからなんだ。


さっき構われたのも、彼女を振り払うためだったんだと思う。

わたしが戸惑っているのに気づいていたはずなのに、スルーしていたのがその証拠。

あの子がいなければ、わざわざこんな公衆の面前で話しかけてはこなかっただろう。
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