熱愛系エリートに捕まりました
話を聞きたそうにしていた果穂さんは、わたしが明らかに浮かない顔をしているのを見て黙っていてくれた。

エレベーターから降りるとき、ぽんと背中を軽く叩いてくれた優しさが嬉しくて、泣きそうになる。


それからは仕事に追われたおかげで気が紛れて、薬師丸さんのことで悩まずに済んだ。

結論を先送りにしただけでは意味はないと、わかってはいたけれど。


─────・・・


「瞳子?」


呼びかけられて、ハッと我に返る。

眼下には宝石を散りばめたような夜景が広がっていた。


今日は土曜日だけど、夕方まで薬師丸さんは休日出勤で。

B.C.スクエアの最寄り駅で待ち合わせて車で拾われて、先日彼が話していたイタリアンレストランに連れて行ってもらった。
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