熱愛系エリートに捕まりました
「ん?どうしたの。もしかして先約がある?」


わたしが動揺しているのに気づいた彼が、腕を離してわたしの体を反転させる。

至近距離で向かい合う姿勢になった。


「いいえ、どっちも空いてます」


首を振ると、ホッとしたように笑う。

「楽しみにしてて」とそっと囁いて、頬にキスをされた。


どぎまぎしているうちに手を握られ、駐車場の方へ歩き出す。

これだけ接触していても実は手を繋ぐのは初めてで、硬い手のひらの感触になぜか驚いた。

そっと握り返しながら、手を引かれて彼の後ろをただ黙って歩いた。


─────・・・


自分の気持ちと彼との関係に結論を見出せないまま、あれからまた数日が過ぎた。
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