熱愛系エリートに捕まりました
だけどその点については、昨夜のわたしにも充分に非がある。

落ち込んでいた上にお酒が入っていたからって、今思えばいくらなんでも無防備過ぎた。

なんなら本当に酷い男に捕まっていたかもしれないし、彼はいわば据え膳を頂いたわけで、過失はフィフティフィフティだと思う。


だから彼には気に病まないように言って、忘れてもらおう。

お互い様なんだし、なかったことにするのが二人にとって最善だろう。

名前だって聞かなくていい。素性も知らないままで、過去に流してしまえばいい。

それが大人のやり方だ。


よし、と心を決めたとき、カチャッと独特の小さな音がしてドアが開いた。

布団から顔を出すと、厚手のバスローブ姿の彼が、もう一着のバスローブとスリッパを持って歩いてくる。


「ほら、これを着て。服はクリーニングに出してあるから、そのうち届くよ」
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