熱愛系エリートに捕まりました
薬師丸さんはどう切り抜けるんだろうと、固唾を飲んで見守る。


「そう思っててくれて構いませんよ」


にこ、と愛想よく綺麗に笑いながら放った彼の言葉に、何故か胸が少し重くなった。


「いやぁ、うちに連れて来てくれるなんて光栄だよ。ぜひまた来てくれ」

「もちろんです」

「では、私はこれで失礼します」


最後にわたしにも丁寧にお辞儀をしてくれた小杉さんに、わたしも頭を下げた。

離れていく背中を何とは無しに見送って、正面に座る薬師丸さんに視線を戻す。


ワインを口に運んでいた彼が、気づいて顔を上げる。

それから不思議そうに首を傾げた。


「どうかした?」

「…何でもないです」
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