熱愛系エリートに捕まりました
笑顔を繕って、ゆるゆると首を振る。

彼は怪訝な顔をしてから、「疲れた?もう帰ろうか」と心配してくれた。


どうしていいかわからなかったので、こくりと小さく頷く。

すると彼は黒服に声を掛けて、カードを渡して会計を頼んだ。


「あの、ご馳走様でした。素敵なお店に連れて来てくれてありがとうございます」

「どういたしまして。また来ようね」


お礼を言うと、目を細めて優しく笑いかけられる。

鉄の塊でも飲み込んだような心地のわたしは、笑顔を繕って頷いてみせるのが精一杯。


わたしたちの関係はこういうものなんだと、さっき改めて突きつけられた。

恋人かと聞かれて、肯定も否定もせず、ご想像にお任せしますとお茶を濁す。


別に、何かを期待していたわけじゃない。
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