熱愛系エリートに捕まりました
「本当です。全然元気ですよ」


重ねてそう言えば、まだ少し心配そうにしながらも一応納得したようだ。

エンジンをかけ、車を発進させる。

静かな車内で、窓の外をぼんやり眺めた。


この2週間のうちに、仲村とすれ違ったりして少し話すこともあったけれど、自分でも驚くほど切なさはすっかり消えていた。

失恋したばかりなのに、直後にあんな体験をしたせいで完全に上書きされたんだわ。

仲村への想いの残滓が、きっとあの夜のうちに根こそぎ持っていかれたんだろう。


代わりに薬師丸さんの存在がわたしの中に刷り込まれた。

だから、彼といることがこんなに自然で、違和感がないんだろう。

実際にはおかしな関係なのに、ね。


まだ薬師丸さんと出会ってから日は浅く、会うのはこれで2回目。
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