夢恋から抜け出したなら
「で…?」
こんだけ驚いたくせになんとなく素っ気なく返すあたしに
「で…?って会いたいとは思わんの?」と呆れて返す梨花。
いや、待って。
会いたいに決まってる。
けど……
「え、ほんまに会えるもんなん??」
「圭ちゃんに言うたらいけると思うで。仲よかったらしいし」
梨花は彼氏の呼び名を隠さない。
たまに彼氏がなっていうときもあるけどあたしの前ではほとんど圭ちゃんだ。
「さゆ、狙いや。中内春樹」
とんでもないことを梨花はさらっと言う。
「待って。そんな簡単に言わんといて」
「中内春樹ってな、彼女おらんのやて」
その梨花が何の気なしに発した言葉にあたしの胸は最高潮に熱くなる。
中内春樹は遠い遠い存在だと思っていた。
夢でもいいから会えることを願って寝る前にどれだけ彼のことを思い浮かべて眠りにつこうと努力したか。
それでもあれっきり会えることはなかった。