夢恋から抜け出したなら

新大阪駅2階にある更衣室のドアを開けると、早速明るい声がやってきた。

「さゆ、やっほー」

安藤梨花(あんどう りか)がいつものように軽いノリで挨拶してくる。


「やっほー」と自分では少しテンション高めに返すけど、
「もう、最近さゆテンション低い!」と昨日と同じフレーズで怒られた。

いや、あなたは高すぎなんだけどね…とは言えるわけもなく。



「なんかあったー?最近、さらにテンション低い気いすんねんけど。失恋したとか?いや、ないな。さゆ、彼氏おらんもんな」

あたしが答える隙を与えずに一人ごちゃごちゃと言いながらでも手は止めずに器用に着替えている。

普通こんなこと思ってても口にできないけど彼女の場合は悪気がないからなんだか許しちゃえる部分がある。

梨花とは学校は違うけど同い年で、ここのバイト先に入ったのもほぼほぼ同じ時期だったから結構年配の人たちが多いなかでは気兼ねなく接することができる。

顔がお人形さんみたいに小さくて、黒目がすごい大きいからよくみんなにチワワに似てるなんて言われて彼女のほうもそう言われることに対してまんざらでもなさそうだ。


そんな彼女にはもちろん彼氏は存在して。

しかも超がつくほどイケメン。

ツーショットの写真見せてもらったときなんて思わず嫉妬しちゃったからね。

これぞ正真正銘美男美女カップルだって…
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