月影の夜に。
プロローグ
――双子なのに、どうしてこうも違うのだろう。――
俺の双子の弟は、正直暗いやつだった。
それでも、影十(かげと)には影十のいいところが沢山あった。
どんなに両親があいつを否定しようと、俺はあいつが好きだった。
だって大事なたった1人の弟だから。
あいつは、努力を惜しまないヤツだった。
あいつは、人の心を考えて行動できるヤツだった。
あいつは、影十は――――!!
―――視界に飛び込んできたのは自動車。
耳をつんざく轟音と共に、人の悲鳴、叫び声が聞こえる。
演出かのようにぱらぱら降り出した雨。
―――でも俺は、微動だに動けないのだ。
「...影十?」
血だまりの中、辛うじて見えたのは服だけ。
誰かが、にこりと笑ったのだ。
――歪に、歪に、歪に。