最後にあなたの唇を
「………」
数秒、私たちの間には沈黙が訪れた。
修斗の表情は、顔が伏せられててよく見えない。
『繰り返しご案内いたします。16時10分発のANL航空北海道行き、377便はまもなく…───』
「あ…」
そんな中、再び私が乗る便のアナウンスが聞こえた。
「…修斗」
「……っ」
優しく彼の名前を呼ぶ。
「ごめんね、私行かなきゃ」
時間が迫っている私には、もうこれ以上どうすることも出来なかった。
「ばいばい修斗。元気でね」
そう言って、私の足は修斗とは反対方向に歩き出した。