笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
6 波打ち際の永遠の愛の炎
 険しい山道を下って、のどかな田園地帯に入った。

 成長途中の稲がびっしりと並んでいる。
 どの稲も元気そうに見える。

 旅に出てから今日で三週間。
 あたしが元気だということを伝えるため、穂乃果とすみれさんに手紙を送ることにした。

「地元の友達に手紙を書くから、ちょっと待っててもらえるかな」
「私も友達に手紙を送ります」

 あたしとまなちゃんは、青空の下、田んぼのあぜ道に座った。
 リュックサックから、便箋と封筒と切手を取り出して、まなちゃんに手渡した。
 直筆の手紙を書くのは、あたしはかなり久しぶり。



 はろはろ。あたしは今、新潟県にいるよ。すごく元気だよ。池袋の路上ライブで知り合ったまなちゃんという子と一緒に日本海を目指している途中なんだ。この手紙が穂乃果の家に届く頃には、日本海に着いていると思う。また手紙を送るね。
                           
                                      旅の空にて 佐藤さき

 お元気ですか。あたしはすこぶる元気です。今は新潟県にいます。旅の途中で知り合ったまなちゃんという子と一緒に旅を続けています。お土産を持って帰りますので、楽しみにしていてくださいね。また手紙を送ります。

                                      旅の空にて 佐藤さき



 あたしは字が下手くそだ。どんなにゆっくり書いても、ミミズみたいな字になってしまう。でも、読めないことはないと思う。字が下手でも、気持ちが伝わればそれでいい。
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