笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「まなちゃんは、字が上手だね」
「ええ、まあ。私は書道教室に通っていたことがありますので」
 謙虚した態度で答えてくれたまなちゃんの字はとても達筆だ。
 達筆すぎて、あたしには読めない。

 知識が豊富で達筆すぎる字を書くまなちゃんは、いったいどんな友達と付き合っているのだろう  あたしのような頭の悪い人ではなく、頭の良い人と付き合っているに違いない。

「直筆の手紙って、風情があっていいね」
「そうですね」

 手紙を書き終えたあたしとまなちゃんは、リュックサックを背負って立ち上がり、郵便ポストを探しに向かった。

 のどかな田園地帯を抜けて、小さな町にたどり着いた。
 手紙を書いた場所から、三時間ほど歩いたところで、ようやく郵便ポストを見つけた。

 あたしは二通の手紙を投函して、まなちゃんは七通もの手紙を投函した。

 メールなら一瞬で届く。こんなに苦労しなくて済む。手紙は一瞬では届かない。何日か経ってから届く。あたしはメールより手紙のほうが好き。
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