笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「水が冷たそうだけど、水着に着替えて海に入ろうか」
「はい。心を鍛え直すために、日本海の荒波に揉まれてみようと思います」

 あたしとまなちゃんは、人の少ない浜辺でバスタオルを巻いて、水着に着替えた。

 黒のTバックビキニ姿のあたしは、売れない着エロアイドルのようだけど、フリルのついたピンクのワンピース姿のまなちゃんは、売れっ子アイドルのよう。

「ものすごく大胆な水着ですね。目のやり場に困ります」
「あたしはTバックしか履かないから、水着もTバックなんだ」
「そうなんですか。さきさんは勇気がありますね」
「もう一着あるから、まなちゃんもTバックビキニを着てみる?」
「絶対に無理ですよ。私は遠慮しておきます」
 まなちゃんは顔を赤らめながら言った。

 お尻丸出しのTバックビキニを着るには、それなりの勇気が要る。
 恥ずかしがっているまなちゃんに無理に着せるわけにはいかない。

「それでは、日本海の荒波に揉まれてきます」
 引き締まった表情で言ったまなちゃんは、助走をつけて砂浜を走っていき、「日本海さん! 私の心を鍛え直してください!」と大声で叫んで、荒々しい波が打ち寄せる海に飛び込んでいった。

 波打ち際から、十数メートルほど離れた所で、日本海の荒波に揉まれまくっている。なんだかとっても楽しそう。
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