笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 あたしも助走をつけて砂浜を走っていき、荒々しい波が打ち寄せる海に飛び込んだ。

 でんぐり返し。でんぐり返し。海中ででんぐり返し。冷たい海の水が気持ち良い。

 日本海さん、そんなにあたしのおっぱいを揉まないで。気持ち良くさせないで。と心の中でつぶやき、あたしも日本海の荒波に揉まれまくって、砂浜に上がった。

 心と体の汚れを、少しは洗い流すことが出来ただろうか。たぶん、できていないと思う。

「さきさん、胸が出ちゃってますよ」
 先に砂浜に上がっていたまなちゃんが教えてくれた。

「あ、本当だ。おっぱいが出ちゃってる」
 日本海の荒波に揉まれているうちに、ビキニの紐がほどけてしまったようだ。

 女だらけの水泳大会じゃないのに、思わずおっぱいポロリ。寒さで乳首が陥没している。ちょっと恥ずかしい。

 あたしはものすごくエッチなことを考えながら乳首を勃たせて、ビキニの紐をきつく結び直し、まなちゃんの隣に座った。

 体が冷えて、めちゃめちゃ寒い。でも、この寒さに耐えることも、汚れた心と体を鍛え直すことになる。


「日本海の荒波に揉まれてどうだった?」
 清々しい笑顔で海を見つめているまなちゃんに聞いてみた。

「とっても楽しかったです。心が鍛え直されたような気がします。さきさん、私を日本海まで連れてきてくれて、本当にありがとうございました」
 あたしにお礼を言ってくれたまなちゃんは、とても満足げな笑顔を浮かべている。

 旅の目的を達成したまなちゃんは、東京の家に帰ってしまうのだろうか。このままあたしと一緒に旅を続けてくれるのだろうか。すごく気になるところだけど、今は何も聞かないでおくことにした。
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