笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「まなさんとさきさんは、旅をしているんですね」
「はい。そうです。それで、あの、綾香さんにお聞きしたいことがあるんです」
「何でしょうか?」
「綾香さんは、どうして海に向かって叫んでいたんですか? 何か事情があるなら、私とさきさんに話してもらえませんか?」
「………………」
やっぱり、何らかの事情を抱えているのだと思う。綾香さんは、まなちゃんの質問に口を閉じてしまった。
「辛いことでしたら、無理に話さなくてもいいんですよ」
まなちゃんが綾香さんに優しく声を掛けた。
「…………こうして出会ったのは、何かの縁だと思いますので、まなさんとさきさんに、私の過去を話させていただきます」
涙声で言った綾香さんは、少し間を置いてから、海に向かって叫んでいた理由を語り始めてくれた。まなちゃんとあたしは、綾香さんの話に静かに耳を傾けた。
綾香さんの話によると、五年前の夏、その当時付き合っていた彼とこの海岸で海水浴を楽しんでいたとき、綾香さんが溺れそうになったところを彼に助けられ、綾香さんだけが助かってしまい、彼は海で溺れて亡くなってしまったとのこと。大切な彼を失った綾香さんは、その日の翌日から、一日も欠かさず、一人でこの海岸に来て、天国にいる彼のことを想いながら、海に向かって、バカヤローと叫んでいるらしい。綾香さんが被っている小麦色の麦わら帽子は、綾香さんの誕生日に、彼がプレゼントしてくれたもので、今でも大切に被っているとのことだった。
だから海が憎い。だから海に向かって、バカヤローと叫ぶ。
あたしは愛する人を失った経験が無いから、綾香さんの気持ちの全てはわからない。あたしにわかることは、悲しい。苦しい。辛い。悔しい。ということだけ。目に涙を浮かべながら海を見つめている綾香さんは、あたしには想像できないくらい、いろんな悩みを抱えているのだと思う。あたしとまなちゃんに出来ることは、綾香さんの話を聞いてあげること。
「はい。そうです。それで、あの、綾香さんにお聞きしたいことがあるんです」
「何でしょうか?」
「綾香さんは、どうして海に向かって叫んでいたんですか? 何か事情があるなら、私とさきさんに話してもらえませんか?」
「………………」
やっぱり、何らかの事情を抱えているのだと思う。綾香さんは、まなちゃんの質問に口を閉じてしまった。
「辛いことでしたら、無理に話さなくてもいいんですよ」
まなちゃんが綾香さんに優しく声を掛けた。
「…………こうして出会ったのは、何かの縁だと思いますので、まなさんとさきさんに、私の過去を話させていただきます」
涙声で言った綾香さんは、少し間を置いてから、海に向かって叫んでいた理由を語り始めてくれた。まなちゃんとあたしは、綾香さんの話に静かに耳を傾けた。
綾香さんの話によると、五年前の夏、その当時付き合っていた彼とこの海岸で海水浴を楽しんでいたとき、綾香さんが溺れそうになったところを彼に助けられ、綾香さんだけが助かってしまい、彼は海で溺れて亡くなってしまったとのこと。大切な彼を失った綾香さんは、その日の翌日から、一日も欠かさず、一人でこの海岸に来て、天国にいる彼のことを想いながら、海に向かって、バカヤローと叫んでいるらしい。綾香さんが被っている小麦色の麦わら帽子は、綾香さんの誕生日に、彼がプレゼントしてくれたもので、今でも大切に被っているとのことだった。
だから海が憎い。だから海に向かって、バカヤローと叫ぶ。
あたしは愛する人を失った経験が無いから、綾香さんの気持ちの全てはわからない。あたしにわかることは、悲しい。苦しい。辛い。悔しい。ということだけ。目に涙を浮かべながら海を見つめている綾香さんは、あたしには想像できないくらい、いろんな悩みを抱えているのだと思う。あたしとまなちゃんに出来ることは、綾香さんの話を聞いてあげること。