笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「さきさん! 綾香さん! 大丈夫ですか!」

 まなちゃんの声が聞こえる。波の音も聞こえる。海水をかなり飲んだようで、吐き気がするけど、体の痛みは感じない。

「さきさん! 綾香さん! 私が背中をさすりますので! 海水を吐き出してください!」

 まなちゃんが一生懸命にあたしの背中をさすってくれている。綾香さんも生きているようだ。

 飲み込んだ海水を吐き出したあたしは、ゆっくりと立ち上がり、まなちゃんと一緒に綾香さんの背中をさすった。

「ごほっ、ごほっ、ごほっ」
 苦しそうな表情で海水を吐き出した綾香さんも、全身ずぶ濡れになっているけど、どこにも怪我はしていないよう。

「二人とも無事で良かったです。もう無茶なことはしないでくださいね」
「うん。余計な心配を掛けて、本当にごめんね」
 あたしはまなちゃんに向かって頭を下げた。

 あたしも綾香さんも生きていたからいいものの、最悪の結果になってしまったら、まなちゃんを悲しませてしまう。無茶なことは二度としない。あたしは心に固く誓った。
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