笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「それだけ彼を愛しているということですね」
「はい。でも、さきさんが私にしてくれたこと、ものすごく心に響いてますよ。こんな私のために、命を懸けてくださって、本当にありがとうございました」
 綾香さんがあたしに頭を下げてお礼を言ってくれた。
 厳しく当たったあたしにも、心を開いてくれたよう。

「お礼は彼に言ってあげてください。綾香さんとあたしの命を救ってくれたのは、綾香さんの彼だと思います」
「はい! 彼に感謝の気持ちを伝えようと思います!」
 嬉しそうな声で言った綾香さんは、オレンジ色に染まっている空を見上げた後、波打ち際に漂っている棒切れを拾って、砂浜に文字を書き始めた。



 大好きな雄介へ 

 今日は、とっても素敵な出会いがありました。とっても貴重な経験が出来ました。命の大切さを教わりました。私とさきさんの命を救ってくれて、どうもありがとう。いつの日か必ず、雄介の元にいくから待っててね。ずっとずっといつまでも愛しています。



 綾香さんが砂浜に書いた彼へのラブレターは、波によって消えてしまったけど、綾香さんの彼に対する愛の炎は、いつまでも消えることはないと思う。
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