笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「私と雄介の歌だったんですね。素敵な歌を聴かせてくださって、どうもありがとうございます」
 綾香さんが立ち上がって、あたしにお礼を言ってくれた。
 両頬が涙で濡れているけど、とっても優しい表情を浮かべている。

「どうもお粗末様でした」
 あたしはアコギを背中に回して、綾香さんとまなちゃんに向かって頭を下げた。

「さきさん、まなさん。よかったら、私と友達になってくれませんか?」
 綾香さんがにっこりと微笑みながら言ってくれた。

「もうとっくに友達ですよ」
 あたしとまなちゃんは、声を揃えて同じことを言った。

 友達の定義なんてものは、あたしの中では存在しない。友達だから友達。ただそれだけ。
 にこにこと微笑んでいるまなちゃんも、あたしと同じ考え方を持っているのだと思う。

「そう言ってもらえると、ものすごく嬉しいです。さきさんとまなさんは、息がピッタリですね」
「あたしとまなちゃんは、姉妹のような関係ですからね」
「そのとおりです。綾香さん、もしよかったら、私とさきさんと一緒に旅をしてみませんか?」
 まなちゃんが綾香さんに言ったことを聞いて、あたしはものすごく嬉しくなった。旅の目的を達成したまなちゃんは、東京の家には帰らず、このままあたしと一緒に旅を続けてくれるよう。
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