笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「銀行強盗の話は冗談ですが、私は本当にお金持ちなので、綾香さんは何も心配しないで旅を楽しんでくださいね」
「それでは、まなさんとさきさんと一緒に旅をさせてもらいます。彼に報告しますので、ちょっと待っててくださいね」
 元気を取り戻した様子の綾香さんは、右手で麦わら帽子を押さえながら、波打ち際に近づいていった。

「雄介! 私は、この砂浜で出会ったさきさんとまなさんと一緒に旅をしてみることにしました。いろんな所を巡って、いろんな人と触れ合って、何かを学べたらいいと思っています。旅から帰ってきたら、真っ先に雄介に報告するからね」
 明るい声で彼に報告した綾香さんが、海に向かって、バカヤローと叫ぶことは、もう二度とないと思う。

「言い遅れていましたが、私の実家は魚屋なんです。お世話になったお礼として、さきさんとまなさんに新鮮な海の幸をご馳走したいので、今から私の家に行きませんか?」
 綾香さんがとっても明るい笑顔で言ってくれた。

 魚より肉のほうがいいな。このところずっと魚ばかり食べているから、あたしは肉を食べたいんだよ。出来れば、焼肉か生姜焼きがいいな。などと言ってはいけない。綾香さんの好意を無駄にしないために、お魚ちゃんをゴチになります。
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