笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「綾香がお友達を連れてきたのは久しぶりですので、みんな喜んでいるんですよ。たくさん召し上がってくださいね」
 綾香さんのお母さんが笑顔で言ってくれた。

「はい、ご馳走になります」
 綾香さんのお母さんの掛け声で、みんな一斉に、「いただきます」の挨拶をして、あたしもお箸を持って、イカソーメンを食べてみた。

 つるつるっとした喉越しが食欲をそそる。美味しすぎて、どうにもこうにも箸が止まらない。

 あたしの隣に座っている綾香さんもまなちゃんも綾香さんのご家族も、みんな笑顔で料理を食べている。

 家族っていいな。家族って温かいな。家族って素敵だな。あたしは幸せを感じた。

「鱈の白子を食べてみてください」
 あたしとまなちゃんに鱈の白子を勧めてくれた綾香さんが立ち直るまでには、まだまだ時間が掛かると思うけど、温かい家族に囲まれている綾香さんなら、いつかきっと立ち直ってくれると、あたしは思った。

「どうもご馳走様でした。どのお料理もとっても美味しかったです」
 あたしとまなちゃんは、新鮮な海の幸をご馳走してくれた綾香さんのご家族に頭を下げてお礼を言った。

 満腹、満腹、ちょー満腹。あたしのお腹は妊娠したかのように膨れ上がっている。

 陣痛が始まってるよ。産まれそうだから、早く産婆さんを呼んで。などと言ってはいけない。どんなにお腹が苦しくても、この場で魚介類を産み落としてはいけない。
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