笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～
「私の部屋に行きましょう」
　とってもご機嫌そうな綾香さんに案内されて、あたしとまなちゃんは二階にある綾香さんの部屋に入った。

　あたしの目に真っ先に飛び込んできたものは、机の上に飾られている写真立て。

「この男性が、綾香さんの彼なんですね」
　あたしは机の上に飾られている写真立てに指を指した。

　青空と海を背景に、小麦色の麦わら帽子を被っている男女の写真。

　二人ともにっこりと微笑んでいて、仲良さそうに腕を組んでいる。

　大切な思い出が詰まっているに違いない。

「五年前の雄介です」
　恥ずかしそうに答えてくれた綾香さんは、机の上に飾られている写真立てを大事そうに持って、昔を懐かしむような表情で彼のことを語り始めてくれた。

　あたしは好きな人も彼氏もいないんだから、そんなにのろけないでよ。などと言ってはいけない。優しい笑顔で綾香さんの話に耳を傾けているまなちゃんのように、あたしも優しい笑顔で綾香さんの話に耳を傾けなければならない。
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