笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「さきさん、旅のルール、一度だけ破ってもいいことにしませんか?」
 まなちゃんが真剣な表情で提案してくれた。

「もうちょっとだけ考えさせて」
 まなちゃんが提案してくれたとおり、たった一度だけ旅のルールを破ってもいいことにすれば、津軽海峡を渡れる。

 でも、自分で決めたルールを簡単に破るわけにはいかない。

 あたしはじっくりと考えて、たった一度だけ。たった一度だけ旅のルールを破ってもいいことに決めた。

 津軽海峡を渡るために、フェリーに乗る。まなちゃんと一緒に旅を続けるためだから仕方がない。後にも先にもたった一度だけ。

「それじゃあ、青森からフェリーに乗って、北海道の宗谷岬を目指そうか」
「はい! 宗谷岬を目指しましょう!」

 新たな旅の目的地を決めたあたしとまなちゃんは、喫茶店から出て、日本本土、最北端の地、宗谷岬を目指して歩き始めた。

 あたしは暇人だから、いくら時間が掛かっても構わないけど、まなちゃんの有給休暇は残り二ヶ月くらいなので、なるべく急がなければならない。でも、焦っても仕方がない。

 急がず焦らず旅を楽しむことが大切。
< 134 / 258 >

この作品をシェア

pagetop