笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 あたしとまなちゃんは、これまでどおり、自分たちのペースで歩いて、日本海沿いの海岸で海水浴を楽しみながら、山形県を目指して歩き続けた。

 横に長い新潟県には、いろんな海岸があって、いろんな風景を楽しむことが出来る。

 まなちゃんはスマホでいろんな風景画像を撮りまくっていて、撮った画像を水樹くんと綾香さんに送っていた。スマホを持っていないあたしは目と心で楽しんだ。

「夕日が綺麗だね。ちょっと海岸に降りてみようか」
「はい。降りてみましょう」

 家族連れなどの海水浴客が帰り始めた海岸に降りて、黄金色の波が打ち寄せる波打ち際に立ち、日本海に沈んでいく夕日を眺めた。

 オレンジ色に輝いている美しい夕日。キラキラと輝いている水面。自然が創り出すアートは本当に素晴らしい。人には創り出せない究極のアート。あたしはまなちゃんが夕日の画像を撮っている間に、夕日の歌を考えた。次の路上ライブで歌う予定。

「さきさん、この画像はどうですか?」
「すごく綺麗に撮れてるね」

 静かな砂浜に座って、まなちゃんが撮った画像を見ていたとき、どこかで見かけたことのあるような二人組が、あたしとまなちゃんの方に向かって歩いてきた。

「こんにちは。僕たちのことを覚えていらっしゃますか?」
 どこかで見かけたことのあるような二人組は、あたしとまなちゃんを襲おうとしたナンパ野郎どもだった。
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