笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 海水浴を満喫して、かんかん照りの中を歩き続けていたため、あたしもまなちゃんも、かなり日焼けをしてしまった。

「さきさーん! どこにいるんですか?」
「あたしなら、ここにいるよ」
「あ、そこにいたんですか」

 視力が低いまなちゃんは、夜になると、あたしの顔が見えなくなるようだ。

 闇に紛れるほど、真っ黒に日焼けしたあたし。なんていうのは冗談だ。あたしはそこまで日焼けしていない。黒ギャル二歩手前くらいだと思う。



 暑い暑い言いながら、日本海沿いの国道七号線を北に向かって歩き続けていくと、新潟県と山形県の県境にある、景勝弁天島という小さな島にたどり着いた。

 旅に出てから、あまり観光はしていなかったので、陸続きになっている景勝弁天島に歩いて渡り、日本海の絶景を目に焼き付けた。

 厳島神社に立ち寄り、貧乏人のあたしは、お賽銭箱に五円玉を入れて、お金持ちのまなちゃんは、千円札を入れた。

 パン! パン! シンガーソングライターデビューが出来ますように。どうぞよろしくお願い致します。



 日本海の風景も海水浴も飽きたので、あたしとまなちゃんは進路を北西に変えて、内陸方面に向かった。

 どこを見渡しても、田んぼ、田んぼ、田んぼ、田んぼ、田んぼ。緑の稲、緑の稲、緑の稲、緑の稲、緑の稲。たまにカカシ。たまにスズメ。たまに人。たまに軽トラック。

 のどかな田園風景は見飽きたよ。ビルが恋しいよ。お米を育てるんじゃなくて、小麦を育ててよ。などと言ってはいけない。下がり続けている自給率を上げるために、日本人の主食であるお米をもっと食べなければならない。
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