笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「南州神社の場所がわかりました。ここからだと、かなり距離がありますよ。タクシーを呼んであげましょうか」
「わしは、お金を持っていないんです」
「タクシー代なら、私が出しますよ。はい、一万円」
突然のまなちゃんの必殺技に、あたしは思わず笑ってしまった。
「見ず知らずの人から、お金を受け取ることはできません」
ステテコ姿のおじいちゃんは、右手を振りながら、まなちゃんの好意を断った。
一万円も差し出されたら、普通は誰でも断ると思う。
「では、どうしましょうか」
まなちゃんが困った顔をしている。ここはあたしが助け舟を出さないといけない。
「ここから南州神社まで、何キロくらいあるの?」
「たぶん、十五キロくらいだと思います」
「十五キロかあ。かなりの距離だね。ねえ、おじいちゃん。南州神社まで、あたしたちと一緒に歩いて行く?」
「うん。それじゃあ、あなた方と一緒に歩いて行こうかな」
はにかんだ笑顔で返事をしてくれたステテコ姿のおじいちゃんは、ブサイク顔の秋田犬の頭をなでなでして、あたしとまなちゃんの後に続いて歩き始めた。
歩くのが遅せーんだよ! ちゃっちゃと歩きやがれ! そんなに遅いペースで歩かれたんじゃ! 日が暮れちまうだろ! などと言ってはいけない。ステテコ姿のおじいちゃんは、老体にムチを打って、一生懸命に歩いているのだ。戦後の日本を生き抜いたご老人はいたわらなければならない。
「わしは、お金を持っていないんです」
「タクシー代なら、私が出しますよ。はい、一万円」
突然のまなちゃんの必殺技に、あたしは思わず笑ってしまった。
「見ず知らずの人から、お金を受け取ることはできません」
ステテコ姿のおじいちゃんは、右手を振りながら、まなちゃんの好意を断った。
一万円も差し出されたら、普通は誰でも断ると思う。
「では、どうしましょうか」
まなちゃんが困った顔をしている。ここはあたしが助け舟を出さないといけない。
「ここから南州神社まで、何キロくらいあるの?」
「たぶん、十五キロくらいだと思います」
「十五キロかあ。かなりの距離だね。ねえ、おじいちゃん。南州神社まで、あたしたちと一緒に歩いて行く?」
「うん。それじゃあ、あなた方と一緒に歩いて行こうかな」
はにかんだ笑顔で返事をしてくれたステテコ姿のおじいちゃんは、ブサイク顔の秋田犬の頭をなでなでして、あたしとまなちゃんの後に続いて歩き始めた。
歩くのが遅せーんだよ! ちゃっちゃと歩きやがれ! そんなに遅いペースで歩かれたんじゃ! 日が暮れちまうだろ! などと言ってはいけない。ステテコ姿のおじいちゃんは、老体にムチを打って、一生懸命に歩いているのだ。戦後の日本を生き抜いたご老人はいたわらなければならない。