笑顔と猫とどんぶらこ～フーテンさきの歌紀行～

「もうすぐ九時になりますが、今夜はもう寝ますか？」
「なんだか眠くないんじゃよ」
「では、眠くなるまで何かして遊びましょうか。おじいさんの好きなことは何ですか？」
「わしは、将棋が好きなんじゃよ」
「将棋は私も好きですよ。お相手していただけますか？」
「うん。いいよ。待ったなしじゃぞ」
「それでは、将棋の駒と将棋盤を作りますね」

　まなちゃんがハサミで紙を切って、将棋の駒と将棋盤を作った。

　みんなでテントの中に入って、ステテコ姿のおじいちゃんとまなちゃんがＬＥＤランタンの灯りを頼りに将棋を始めた。

　二人とも将棋をよく知っているよう。あたしは将棋をやったことがないので、歩の動かし方すらわからない。

「そうきましたか。それではこうします」
「なかなかやるのう」

　将棋のルールを全く知らないあたしは、日本酒を飲みながら、ブサイク顔の秋田犬と一緒に、ステテコ姿のおじいちゃんとまなちゃんの白熱した対戦を見守った。

「王手じゃ！」
　ステテコ姿のおじいちゃんが嬉しそうな声で言った。

「あ、詰んでしまいました。おじいさんは強いですね。もう一度、お相手願えますか？」
「うん。いいよ」
　薄暗いテントの中で将棋に夢中になっているステテコ姿のおじいちゃんとまなちゃん。本当の祖父と孫のように見える。

「王手じゃ！」
「あ、また詰んでしまいました。おじいさんは本当に強いですね。もう一度、お相手願えますか？」
「うん。いいよ」

　将棋が好きなステテコ姿のおじいちゃんとまなちゃんは、三回対戦し、勝敗の結果は、ステテコ姿のおじいちゃんの全勝だった。

　真面目なまなちゃんがわざと手を抜いて負けてあげたとは思えない。ステテコ姿のおじいちゃんの将棋の腕は本物のよう。