笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 巨大な将棋の駒に押し潰される夢を見て目が覚めた。

 今日も朝から暑い。空気がもわっとしている。全身寝汗でびっしょり。

 あたしは水をひと口飲んで、服を着替えてテントから出た。

 ステテコ姿のおじいちゃんとまなちゃんがラジオ体操をしている。

 なんとも元気なじいさんだ。とあたしは思った。



 あたしとまなちゃんとでテントの脇にレジャーシートを広げて、みんなで輪になって朝ご飯を食べた。

「どうもご馳走さんじゃった」
 食欲旺盛なステテコ姿のおじいちゃんは、朝から菓子パンを七つも平らげた。

 本当によく食うじいさんだ。とあたしは思った。

「家の場所を思い出しましたか?」
 まなちゃんがステテコ姿のおじいちゃんに尋ねた。

「んんー、どこじゃったかな」
「思い出せないんですね。今日も私とさきさんと一緒に旅をしますか?」
「うん。あなた方と一緒に旅をさせてもらうよ」
「今日は、どこに行きましょうか」
「南州神社に行こう」
 
 また南州神社に行くのかよ! 昨日行ったばかりだろ! また西郷隆盛の話をする気なんじゃねーだろうな! などと言ってはいけない。ステテコ姿のおじいちゃんが南州神社に行くと言ったからには、今日も南州神社に行かなければならない。
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