笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「あなた方には本当にお世話になったのう。わしの家に上がってくだされ」
 はにかんだ笑顔で招いてくれたステテコ姿のおじいちゃんとぽちすけちゃんが、玄関のドアを開けて家に入っていったので、あたしとまなちゃんも玄関に入った。

「幸子、帰ったぞ」
 何事もなかったかのように奥さんの名前を呼んだ田吾作おじいちゃん。

 自分が迷子になっていたことを忘れてしまったのだろうか。

「おかえりなさい。ずっと心配してたのよ」
 安心したような表情で田吾作おじいちゃんに声を掛けた幸子さんは、とても清楚な感じで若々しく見えるおばあちゃん。

「どうして心配しとったんじゃ?」
「…………こちらの方々はどなたなの?」
 幸子さんは少し間を置いてから、質問を質問で切り替えした。

「わしとぽちすけのお世話をしてくれたお姉さんたちじゃよ」
 田吾作おじいちゃんは、ぽちすけちゃんの頭をなでなでしながら、あたしとまなちゃんを幸子さんに紹介してくれた。

「こんにちは。お邪魔しています」
 あたしとまなちゃんは、玄関に立ったまま、幸子さんに自己紹介をして、あたしとまなちゃんが旅人であることと、昨日から今日にかけてのことを話してみた。

「さきさんとまなさんと一緒に冒険をしてきたんですね。私の主人が大変お世話になりました」
 冒険と言ってくれた幸子さんが、あたしとまなちゃんに向かって深々と頭を下げた。

 田吾作おじいちゃんはちょっとボケているけど、幸子さんはしっかりしているよう。
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