笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
「西郷隆盛、生まれは文政十年十二月七日。数々の苦難を乗り越えて、薩長同盟、江戸城無血開城、西南戦争で活躍し……」
「あはははは! その話し方、田吾作おじいさんにちょっと似ています。あはははは!」
 あたしの田吾作おじいちゃんのモノマネを見たまなちゃんが、お腹を抱えながら笑っている。

 自分でも、ちょっと似ていると思う。

「わはははは!」
 どこからか、低い声の笑い声が聞こえてきた。

 南州神社には、あたしとまなちゃんしかいない。

 もしかしたら、今の笑い声は、西郷隆盛の笑い声だったのかもしれない。とあたしは思った。


 
 鈴木さんご夫妻から学んだこと。

 夫婦の愛。
 夫婦の絆。
 夫婦の優しさ。
 夫婦の温かさ。
 認知症は治る可能性があるということ。
 愛する人のために元気でいること。

 あたしには、愛する人はいないけど、いつか愛する人が出来ると思って、いつまでも元気でいようと思った。 

「幸子さんにいただいた梅干しを食べてみようか」
「はい。食べてみましょう」
 真っ赤な梅干しを瓶から取り出して、まなちゃんと一緒に食べてみた。

「すっぱーい!」
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